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2016年7月

科学するブッダ 角川ソフィア文庫

佐々木 閑 著

世界三大宗教の中で、科学の合理性と渡り合えるのは上座部仏教。
著者は高校、大学と理系に進みながら、大学で文学部仏教学科に編入した異色の仏教学者です。

本書は物理学、進化論、数学の解説で3/4を占めています。

内容は最新のものを解説していて、仏教に近づけるためにつまみ食いした科学ではないです。本格的な内容が分かりやすく解説されています。

物理学ではアインシュタイン博士も「神はサイコロを振らない」と反対の立場を取った量子力学について解説されます。すべての物質は原子核と電子からなっていて、その存在は確率でしか表現できないということが述べられます。
当然、絶対神を思考の根本としているキリスト教など西洋の宗教とは相容れません。たとえ最先端の科学者であっても、生まれつき育ってきた環境を否定することに躊躇うことがあり、どうしても頭でわかっていても心が理解できないことがあります。

進化論ではキリスト教との真っ向対決になります。最先鋒のダーウィンは神は不可知であるとして、宗教家との対決を終生行わなかったため、教会組織から排斥されることなく、生き残った進化論です。しかし、研究が進むにつれて次々教義との乖離が激しくなり、現在では聖書を否定する最先鋒として君臨しています。


数学では、無理数や数えられる無限、数えられない無限について語られています。
本来数学は1個、2個と数えられるものだったのに、発見が進むにつれ、どんどん人間の常識からは想像できない世界が広がってくる中で人々が途方にくれる様子が述べられます。


このような、様々な科学の合理的な論理が人々が創り上げてきた宗教を次々と破壊していく現在において、仏教その中でも釈尊が説いた最初期の仏教のみが科学と真っ向対決しても論理的に成り立つことが述べられます。


最初期の仏教は出家者のためであり、ただ平安な気持ちになるHowToのみが述べられています。
このため、絶対神がなくても成り立つ稀有な宗教です。


しかし、一般の人、いわゆる在家では悟りは得られないという冷徹な面もあり、その欠点を補うため、日本に入った大乗仏教が創作されていきます。


日本はお経に書かれた呪文を唱えれば、極楽浄土に行けると説く宗派が多いですが、
最初期の仏教は輪廻転生の性から解き放たれて消えてなくなることに目的が置かれており、
人々が必要とする宗教とは異なる、仏教の特徴が述べられています。



本書は科学と仏教の類似点だけ挙げて、勧誘する新興宗教などへの警鐘もならしており、理系の考え方をする人は、グローバルで様々な宗教の方とわたりあうためには一読しておくと良いと思います。

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